今回の葺き替えでは隣接棟の2階増築によって、一部の軒に改修が必要となっていました。
増築された2階の壁が茅葺き屋根の軒に接してしまっているため、雨仕舞いが不自然なことになってしまっています。
また、このように軒先に体を入れて作業するスペースが全くないと、そもそも葺き換えること自体ができません。
屋根の形状を変更するためには、それに合わせて下地を作り直す必要があります。
破断したスミレンの補修に合わせて、問題の部分の軒下地にも手を入れます。
隣接棟に接する部分の軒を切り上げて、空いたスペースに雨水を受ける樋を設置します。
簡単な下地補修なら我々屋根屋で済ませますが、このような作業には大工さんの手を借ります。
さらに板金屋さんに仕上げてもらって、新しい軒を付け直します。
これで茅葺き屋根からの軒垂れが、手前の下野庇に速やかに排出されるようになりました。
隣接棟とのあいだに充分な隙間を設けて、新しい軒が取り付けれれました。
茅葺屋根は時間が経つとその形状が変わって行きますので、それを見越して後々問題が生じることの無いようなデザインにしておかなければなりません。
茅葺きというのは伝統を守るようでありながら、常に新しく変化していくものなのですね。
でも、そもそも伝統ってそのまま受け継いでいくものなんかではなくて時代の変化に適応しつつ受け継がれていく姿が美しく、正しい姿なのでしょうね。
新しい軒素敵です。
>ceico さん、
まさしく仰る通りだと思います。
正しい方向に変化させて行くためにも、まず受け継がれて来た伝統の習得と理解に励み、その上で現在の社会環境においてどのような意義を持たせるべきか考え続けることで、変わるべきところと方向は必然として示されるはずだと信じています。