1206 武蔵野入り

ナカノさんの「きたむら茅葺き屋根工事」をお手伝いするために、博物館として公開されている旧白州次郎/正子邸「武相荘」の葺き替えにやって来ました。
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今年最後の現場も関東です。

手入れの行き届いた雑木林に囲まれた、建物の屋根は一面の枯れ草に覆われていて、夏場にはさぞかし青々としていたことでしょう。たくさんの実生も枝を伸ばして周りの林と一体化しようとしているかのよう。
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すぐ軒際にあるシラカシではなく、親木の少し離れたカエデやケヤキの苗が多いのが不思議と言えば不思議です。

軒裏を覗くと、軒の端は乾いているのに中程が濡れています。
屋根の中に雨水が入り込んでしまっている証拠です。
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果たして幼木を引っこ抜くと巨大な穴が・・・
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では、木の根がこの穴を穿ったのかと言えば、必ずしもそうとは限りません。
普通の状態では雨水は茅葺き屋根の表面を流れるだけで染み込むことは無いので、乾いた屋根の内部に木が根を伸ばして行く事は無いはずです。実際屋根に芽を出した実生や雑草を引っこ抜くと、屋根表面の風化した部分に広く浅く根を張っている事が殆どなのです。

穴の中からは今まで見たことのないような、立派に太ったカブトムシの幼虫がごろごろ出て来ました。
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カブトムシの幼虫は乾いた屋根までせっせと食べては良質の腐葉土に変えてしまう、茅葺き屋根に取っては癌のような困った存在です。

古い屋根の断面を見ると、ススキで葺かれた屋根に後年の補修でヨシによる差し茅がされてますが、差されたヨシが丸ごと水に浸かったような状態になってしまっています。
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差し茅の際に古い屋根との取り合わせや勾配が合っていないと、このように屋根の表面ではなく中を雨水が流れてしまうことがあるようです。これでは、せっかく差した部分が屋根としての用を成していません。特に異なる素材を混ぜる時には注意が必要です。

要するに、穴があく程屋根が傷んだ原因はひとつには絞れません。
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周りを木々に囲まれた、茅葺き屋根に取ってはやや厳しい環境であることを肝に銘じて、関西の屋根屋が笑われないように、長持ちする良い屋根にしていきたいと思います。

5 thoughts on “1206 武蔵野入り

  1. よっすぃぃ 投稿作成者

    寒くなってきて、外のお仕事お疲れさん。
    本家のHPにも工事の様子が出てますね。
    またのぞきに行きますよ。

    いつも思うのですが、幼虫は売れんのか?

  2. おち 波 投稿作成者

     ご無沙汰しております。
     こっちで年を越すのでしょうか?
     鶴川からは車で15分程度に
     スタジオが御座いますので
     お時間が有りましたら、お越し下さい。
     http://www.fix-st.com/p01/index.html

  3. ichide 投稿作成者

    なるほどです。
    茅は自然に崩壊していく、または、
    人の手で漏らぬようにする、
    考えようによっては、如何様にでも
    できますか。・・・

    つまり、あえて自然化するままにしたいか、
    (持ち主がいなくなると土に返っていく)
    継続的に住み続ける為に手入れをするか。
    刺し茅はなんとなし、すがすがしいですね。
    材料をとる茅場を手入れする事も含め。

    これは、経済的な事はさておき、
    人と自然のはざまにある、
    環境芸術、生活芸術としての観方です。
    生きる事は、すなわち、家に手を入れつづける事か?(カネをかけてどうこうってのでなく、すみ手は当然、関わる人誰彼が、手をかけるという事)
    昔の人は家屋を愛情を込めてメンテしてきたとおもうのです、その持ち主が死ぬと家も死ぬ、
    新しい住み手ができると、また生き返る・・
    家は人と共にある、ドラマチックです。

  4. ceico 投稿作成者

    山に住む人々は「木は切るもんだ」と言う確固たる自信をお持ちです。
    なので、私なんかが木(雑木)はそのまま伸ばした方がきれいなんですけど・・の声は闇に吸い込まれていきます。
    これは薪にするために切っていただけでなく住居を守るというDNAも働いていたのだということを認識しました。

  5. shiozawa 投稿作成者

    よっすぃぃ さん、おち 波 さん、ichide さん、 ceico さん、コメントありがとうございます。

    >よっすぃぃ さん、
    それがあまり寒くないのですよ、今年は。
    今のところですが。
    昨年の大雪が嘘のよう、変な気候です。

    カブトムシの幼虫、買う? 美味しいらしいよ w

    >おち 波 さん、
    ご無沙汰しています。

    まだ周りの地理状況をきちんと把握できていないのですが、そんなにご近所だったのですね。せひまたお会いして飲みましょう w

    スタジオに茅葺くハナシも、ぜひご検討ください!

    >ichide さん、
    「自然から生まれた日本家屋は、住む人がいなくなれば、また自然へと帰る」 僕の好きな建物の見方です。
    茅葺きは朽ちる時には、屋根が土に変わってから家の中に落ちてくるので、本当にあっという間に自然へと帰ってしまいます。
    雑木林や棚田が、人の手が入らなくなると直ぐに野生へと戻るように。

    僕自身、美山では日々家の老朽化と戦いながら過ごしていますが、今年は家を空けて関東で過ごす時間が長過ぎて、やや押され気味です。
    台所の雨漏りを気にしつつ。

    >ceico、さん
    枝打ちされ広々とした雑木林は、僕も大好きな空間のひとつです。

    でも、ウチの近所でも田舎のひとは、伐るか伐らないか、何気ないようでものすごく細かいゾーニングで調整していますね。
    雑木を伸ばすところと、芽を出し次第刈り取るところ。草でも毎朝の散歩がてらに一本残らず引っこ抜くところ、まめに刈り込んで芝生化するところ、年一回の草刈りで住ますところ。

    長い暮らしの積み重ねのなかで、最も人の暮らしと自然のバランスのとれた、研ぎすまされた土地利用がなされているのを感じます。

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