0118 刈込み仕上げ/屋根鋏の話

棟上げの式もすんで、本格的に刈込み仕上げに入ります。
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棟の方から順番に足場を外しつつ、軒の方へ向かって下りながら専用のハサミで屋根の表面を刈込み、整えて行きます。
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刈り揃えることで屋根の細かい凹凸を無くし茅そのものの断面も整えて、見た目に美しく水はけの良い、丈夫な屋根に仕上げます。
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しかし、それは茅の最も丈夫な根元の部分を捨ててしまうことにもなりますから、あくまでも刈り取るのを最小限に留められるように、葺いて上がって行く段階で屋根の平面がきれいに出来あがっていることが大切です。

刈り揃えた茅の断面がシャープに保たれるように、刈込みハサミは日に何度も研いで切れ味を保ちます。
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切れないハサミは体の負担になり集中力を切らすばかりではなく、刈る時に茅を潰すようなハサミでは、刈込みをする意味がありませんから。

ハサミは茅葺き屋根用に専用のものを、鍛冶屋さんに特注して打ってもらいます。
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用いる屋根の部分や用途によって大きさやかたちの異なる何本かを使い分けます。
さらに職人各自がそれぞれに使い易いよう工夫し注文するので、武相荘のような現場には様々なかたちのハサミが集まります。

しかし、現在この屋根ハサミを打って下さる鍛冶屋さんが少なくなってしまっています。
僕の弟子入りした十数年前には、美山の周りにも屋根ハサミを打てる鍛冶屋さんが何軒かありましたが、次々と廃業されてしまい、今では熊本と新潟に一軒ずつの鍛冶屋さんに頼っています。
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もともとハサミは2枚の刃物を組み合わせる手間がかかるうえ、職人の使う専用の道具は市場も小さくたいしたもうけも見込めないのに、口やかましい顧客ばかり相手にすることになりますから、余程腕に覚えのある(そして口は悪くとも心優しい)鍛冶屋さんでなくては、手を出すのをためらうのも仕方の無いことだとは思いますが。

茅葺きに限らず伝統的な技能の世界では、担い手の職人がいなくなる前に、職人の使う道具をつくる職人がいなくなるのではないかと、とても心配しています。

6 thoughts on “0118 刈込み仕上げ/屋根鋏の話

  1. にち 投稿作成者

    鍛冶屋の職人さんのお話…
    広告業界に勤めていると、いろんな広告をつくります。
    売るためダケに作るものがもちろん多いです。
    そんなご時世、屋根屋さんの日記を見ると
    鍛冶屋の職人さんにしても
    もちろん屋根屋さんのお仕事にしても
    市場の現実…いろいろ大変ですよね。
    私にしたら、
    普段あまり言及しないようにしていることに
    ふと手を止めて考えしまいます。。
    もちろんデザインという仕事が世の中に役割として不必要な訳ではないのですが^^;
    また休日、美山のようなところにいって
    ゆっくり空をみあげたいなあ。

  2. shiozawa 投稿作成者

    にち さん、コメントありがとうございます。

    もちろんデザインのお仕事は、世の中で大切な役割を担っていますよね。

    僕自身も学校では「デザイナーたれ」という教育を受けて来たので、過去の文化遺産と見なされがちな茅葺きが、現在の世の中で意味ある役割を持つためにはどうあるべきか。全ての仕事は、その在り方をデザインするための手段だと考えて励んで来ていますが・・・
      そうして見付けた新しい茅葺きの価値を多くの人達に伝えるためのデザインとなると、全く修行も才能も足りない自分の至らなさにしばしば呆然となってしまいます。

    このブログも茅葺屋のHPやフライヤーも、たくさんのデザイナーさんたちの力をお借りして作ってきましたが、その度に彼らの修行を積んだ技に感心させられて来ました。
    やはりモチはモチ屋さんですね。一緒にもっと良い仕事をしていくためには、僕が(ビジュアル)デザインの勉強を怠らないことも大切とは言ってもですね。

    まあ、それはそれとして、
    お忙しい中に時間が作れましたら、ぜひまた美山にもいらして下さい。
    茅刈りもたまにすると楽しいですよ w

  3. とまとん 投稿作成者

    道具の大切さ・・職人さんの技術を支えているものは、まず、道具なのですね。
    そういえば、京都の日本料理店の板前さんも、包丁は使うたびに研ぐ・・とおっしゃっていました。
    見えないところでこつこつと努力をして、手間と時間を惜しまず、道具を大切にする・・そこから、いい仕事が生まれるのですね。
    職人さんばかりでなく、日々の暮らしの中で、忘れてはいけない大切なことですね。

  4. shiozawa 投稿作成者

    とまとん さん、コメントありがとうございます。

    職人が道具にこだわるのは、手入れの行き届いた良い道具を使わなければ、結局自分が苦労するだけのことですから。

    むしろ普段使いの道具の方が、適当に扱っていてもとりあえず用事はこなしてしまうので、本当に長く使えて、(自分も周りも)生活を豊かにするような道具を選び大切にして行くことが、案外難しいのかもしれません。
    自分の暮らしも振り返って、少し反省しました。

  5. ceico 投稿作成者

    屋根屋さんの日記はどうも私のところではタイムラグが発生します・・・。アップされないなと思い確認するとアップされているのです(こんなこと書いても意味ないですが)
    私は道具フェチで、今は使う人のいなくなった道具をもらってきてしまいます。それは、使い込まれた美しいものばかりです。
    でも、使い手のなくなった道具は本来の役目は果たせないのですよね。
    でも、だからといって処分されるのが嫌でおいでといってしまいます。

  6. shiozawa 投稿作成者

    ceico さん、コメントありがとうございます。
    そして、タイムラグ発生の原因は僕の方にあります。すみません。

    何しろ日記を実際にその日付通りにはup出来ていないことが多々ありますので。
    mixiのマイミク最新日記に反映されなかったり、そもそも過去の日付のログをupすること自体ルール違反なのでしょうが、現場滞在先は必ずしも通信環境が整っているとは限らず、しかし行程に沿って更新している都合、内容を飛ばす訳にも行かないので、何卒ご了承ください。

    手入れされ使い込まれた道具の美しさは、それが既に本来の機能を果たせなくなっていたとしても、処分されることを看過できるようなものではないと思います。
    ただ、どんな道具も使われることで磨かれる面があるでしょうから、使われなくなった道具の美しさを保つのは、なかなかご苦労も多いのではないでしょうか?

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