070324 茅刈りの日々 2

細くて真っ直ぐで、茅として最高のススキです。
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毎年欠かさず茅刈りをして手入れを続けていると、このようなススキが生えて来てくれます。

一方で事情があって3年ほど茅刈りを休んだ場所は、たちまちこの通り。
枯れたススキを刈って取り除かなければ、翌春の芽吹きの邪魔になり曲がったススキが生えて来ます。やがては枯れ草に空間を占拠されてしまい、芽吹きそのものも不活発となり枯れ草だけの薮となってしまいます。
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枯れ草に遮られて日の当たらなくなった地面には野花が咲くことも無く、枯れ草ばかりでは虫もそれを食べる鳥も暮らすことは出来ません。
やがて枯れ草も絡まるクズに引き倒されて、クズの蔦が絡まり合いのたうつだけの、単一で貧弱(で凶暴)な植生へと移行してしまいます。

ところでこのクズの蔓は茅を束ねる「サンバイコウ」としてはとても具合が良いのですが、それは地面を這っている蔓に限られていて、ススキや灌木に絡まり立ち上がった蔓は使い物になりません。
茅刈りのされた茅場では、クズが成長する時期にはススキはまだ柔らかく丈の低い青草ですから、クズはそれに絡まり立ち上がることはできず、またその必要も無く、地面の上を横へ横へと伸びて行きます。もし茅刈りをしなければ、翌年にはクズは日光を求めて立ち枯れたススキに絡まり立ち上がり枝分かれしてねじれ、混沌としたクズの薮をつくりはじめてしまいます。
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しかし実際には茅刈りをして立ち枯れたススキを取り除くとともに、茅場の地面を這い回っているクズの蔓を集めてサンバイコウとして活用することで、翌年にもクズはおとなしく地面の上に蔓を伸ばし、秋になればススキ野原の中に七草にも数えられる花を咲かせます。
秋の七草は全て茅場に生える植物なのですが、ススキとクズの関係に見られるように、それらは茅刈りという行為を通じて人の暮らしが関わることで、ともに茅場という環境をかたち作り共生してくることが出来たということのようです。

さて、クズの他にも茅場を好んで生える植物は多くあり、このチガヤもそのひとつです。
ススキのような棹が無く柔らかくしなやかなので、これもサンバイコウに使ったりもしていますが、クズの蔓や稲ワラに比べてつるつるして滑りやすいので、束ねた後運ぶときなどに多少ずれて緩んだりしやすいという欠点があります。
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その分稲ワラなどに比べて水には強いと思われるので、ススキに比べて軽量で扱いやすい特徴も活かして、ワラ葺き屋根の茅として使えないかと思い色々と試したりしています。

茅刈りを始めて6年目の茅場。もこもこと株立ちしているのがススキで、その間の暗い部分がセイタカアワダチソウの優先する群落です。
そして、道路から2mくらいの幅で、やや丈の短い草が帯状に茂っているのがチガヤの群落です。
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チガヤはススキよりずっと早く、夏のあいだに花をつけてタネを散らします。
道路沿いにチガヤのベルトができたのは、道路管理者の市が秋の初めに業者を頼んで草刈りをしているせいなのかもしれません。チガヤもススキも刈ることで芽吹きを促し元気になる植物ですが、草刈りをするタイミングによって、チガヤが優先する草原になったり、ススキの優先する草原になったりするのでしょう。

ススキの根株にはナンバンギセルの花の跡が。
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始めて見付けた時には正体が分からず訝しんだものでした。
例年通りのもう少し早い時期に茅刈りをしていると、触るたびに胞子のように細かい黄色のタネをまき散らすので、キノコの仲間かと思っていました。

茅刈りの時期が遅れたせいか、今年はモズもちょっと顔を見せに来たくらいでした。
つがいでやって来ては似合わないやさしい声で鳴き交わしていて、もう茅刈りに張り付いてエサを探し、冬を乗り切るという時期は過ぎてしまったのでしょう。
ちょっと悪いことをしたかなあ。
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かわりにシベリアに帰る前のツグミがやって来て、茅刈りを済ませた茅場を歩き回っていました。

6 thoughts on “070324 茅刈りの日々 2

  1. 花がたみ 投稿作成者

    shiozawaさま
    こんばんは。最高のカヤになるススキ、春の陽に耀いてうつくしい!
    手入れされた所と、そうでない所の差がこれほどまでになるのですね。
    今年は調査に関わった流れで、湯涌にある茅場のカヤ刈りに声がかかりそうです。かなりの斜面に茅場があるそうなので、足腰鍛えねばと今から思っています。

  2. shiozawa 投稿作成者

    花がたみ さん、コメントありがとうございます。

    手入れしただけ良くなって行くことが実感できるのが、茅刈りの醍醐味のひとつです。
    ただそれだけに、一度手を入れた茅場は「今年は休み」という訳には行かないのが負担になることもあります。
    茅葺きを地域の自然と文化の象徴として捉え直すことで、住人だけの問題ではなく社会的な財産として茅場が維持されるような環境づくりを進めることで、そのような負担感が緩和されることを期待していますが。

    湯涌の茅場は伝統的な茅場なのでしょうか。だとすると白山山系の茅場というと、本当に急勾配の雪崩斜面というイメージがあります。
    足下は絶対に山林用の「スパイク地下足袋」がお薦めですよ。頑張って下さい。

  3. 花がたみ 投稿作成者

    >一度手を入れた茅場は「今年は休み」という訳には行かない・・
    自然に手を入れ関わっていくということは、責任とその重みがありますね。
    湯涌の茅場はNPOに入っている湯涌の町の方々が新たに育てているものです。何ヶ所か茅場はあるようです。
    山林用の「スパイク地下足袋」。そういう物があるのですね。ご教示ありがとうございます。

  4. shiozawa 投稿作成者

    >湯涌の茅場はNPOに入っている湯涌の町の方々が新たに育てているものです。

    茅葺きのためにまず、茅場の整備をするという姿勢は素晴らしいと思います。
    湯涌の方々とは茅場そのものが持つ価値についても、ぜひ一度語り合いたいものだと思いました。

    スパイク地下足袋は僕等も最初抵抗があったのですが、斜面地ではトレッキングシューズより遥かに疲労が少なく、また表土を傷めにくいという点でもお薦めします。ぜひ一度試してみて下さい。

  5. COCA-Z 投稿作成者

    はじめまして。
    とても興味深く読ませていただいています。

    クズとススキの関係、目からウロコでした。

    ススキ及び他の七草を覆い尽くして枯らしてしまうクズが何故、並列して秋の七草に数えられているのか永いあいだ疑問に思っていました。

    人と自然が関わりあった景色の中の美意識だったんですね。。。

    チガヤ草地とススキ草地の違い、書物等によると年間の刈り込み回数で決るそうです。(実体験ではないので本当かわかりませんが。。。)

  6. shiozawa 投稿作成者

    COCO-Z さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

    茅刈りや茅葺きを続けていると、人と自然の関わり方について、時折まさに目からウロコの発見に出会うことがあります。
    あくまでも僕の経験の中での実感で、深く検証したものではありませんけれども、里山における人と自然の共生というものについて、その文化としての奥深さを認識させてくれます。

    チガヤとススキの棲み分け、さもありなんと感じます。農家の方々は草刈りのタイミングと回数で、意識されてのことかどうかはともかく、実に細かい植生管理をされておられますから。

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