天橋立を眼前に望む丹後郷土資料館に移築されている、「旧永島家住宅」の屋根を葺き替えに来ました。
丹後の茅葺き民家の特徴でもあるとても高い軒は、養蚕が盛んだった時代に屋根裏を蚕室として利用するために、2階にも窓を設けるために施された改造です。
養蚕のために茅葺き民家には、日本各地でそれぞれ工夫を凝らした改造が施され、今日私達に多様な茅葺き屋根の姿を見せてくれている、大きな要因のひとつとなっています。
それにしても多雪地帯の丹後で、土塗りの大きな妻壁を庇も付けずに曝しているのは、建物の耐久性に問題を生じないのかいつも心配になりますが・・・このスタイルが丹後の西側では普通に見られます。
カラスが茅を抜くと、屋根の表面にこんな風に茅が散らばってしまいます。
加えてこの屋根の場合、破風(ハフ)との境に何者かが潜り込んで穿った穴が開いていますね。
穴を開ける時に茅を掻き出したな・・・
ネコとかイタチとかムササビとかでしょうが、囲炉裏やクドで火を使っていた頃には、屋根裏は煙たくてわざわざ潜り込みたくなるような空間ではなかったはずです。
「囲炉裏を使わないから屋根が傷む」という説は、通説としてまかり通っているほど僕としては納得してはいないのですが、「囲炉裏を使わないから屋根裏が快適→動物が入り込んで天井裏に棲みつく→動物が入らないように隙間を塞ぐ→屋根裏の換気が悪くなり屋根が蒸れて傷む」ということはあると思います。
外観はそれほど傷んではいなかったのですが、解体してみると再利用できる茅はほとんどありませんでした。
前回の葺き替えに用意されたススキの品質が、もともとあまり優れていたとは言えないものだったようです。
下地の竹も軒並み虫食いのために交換が必要で、刈り旬を待たずに慌てて材料を用意しなければならなかった、前回の屋根葺きの際の苦労が偲ばれます。
茅葺きの葺き替えが人の暮らしの中にあった頃には起きなかったことでしょうが、公共事業の予算の執行には、茅葺きのリズムはのんびりし過ぎていて付き合ってもらえないようです。
そんな訳で今時の茅葺き職人には、常時材料のストックが欠かせなくなってしまいました。
下地を交換して軒を付け始めます。
最初に屋根下地に固めの材料を薄くかきつけてこれが軒裏の一番内側のラインとなります。
現場の目の前には横一文字に伸びる天橋立。
晴れた日には広々とした風景に気持ちが和みます。
うらうらとした春の日差しに、のんびりし過ぎて眠くなってしまうのは困りものですが。
宮津ですか〜
丹後郷土資料館とは、どこにあるのでしょう?
ここの写真でみると、なんだか遠くの田舎町に感じるな・・
どこも屋根裏に入ってくる動物に困ってるのですね。うちも入れないよう塞ぎましたが・・
屋根には良くないのかな??
あや さん、コメントありがとうございます。
丹後郷土資料館は宮津の丹後半島側、丹後国分寺跡に接して建てられています。
茅葺き屋根は呼吸していると言われることがありますが、呼吸するためには空気の入り口が必要な訳です。
家の中で火を焚いていた頃には、天井もなく軒周りも隙間だらけで、そこから新鮮な空気を充分に取り込むことが出来ていましたが、火を焚かなくなると天井が貼られ、快適になった屋根裏に動物が入り込まないように隙間も塞ぐと、屋根裏の空気が淀み、茅葺き屋根は呼吸をしにくくなり、蒸れて傷んでいるように感じることが良くあります。
「家の中」には動物が入り込んで来ないようにしっかり塞ぎ、茅葺きの屋根裏には新鮮な空気が届けられるような塞ぎ方を、これから試してみようと計画しています。
天の橋立、なつかしいです。昔、亡くなった祖父とともに、ひざの間から風景をのぞいたのを思い出しました!
観光ではなく、このように貴重な仕事で訪れるのは、なんともすぱらしいですね。
「家の中」はしっかり塞ぎ、屋根裏は風通しよく・・永遠の課題かもしれませんね。そして毎日が勉強なのですね。
とまとん さん、コメントありがとうございます。
幼い頃に見た風景、いつまでも心に残るものがありますね。
日本三景に数えられているしもっとベタな観光地かと思っていたら、のどかな空気の流れる落ち着いた良い感じのところでした。
屋根裏に入り込んだアライグマがおしっこをしたり、タヌキが溜め糞をこさえたりするのは衛生面で大問題なのはもちろん、建物をとても傷めることにもなりますので、何でもお出入り自由という訳には行きませんが・・・
かと言って閉め切ってしまうのも、色々ちょっと。