風破板の下まで葺きつめたら、上から順に仕上げのハサミをかけて、足場の丸太を外しながら下りてきます。
棟を触ることなく、小間だけを楽に葺き替えることができるのは、破風板のある入母屋型の屋根ならではです。
軒まで下りてきたら、軒裏もきれいに刈り揃えます。
足場を解体し、掃除をして完成です。
数年前に葺き換えた北側の屋根の、部分的に傷んでいた場所を差し茅で直しておきます。
日当りの悪い北側などの傷みやすい場所は、まめな補修を怠らないようにするのが、長持ちさせるコツだと思います。
用事があって、先に竣工させたお隣の現場にお邪魔してきました。
と、屋根の表面がぼんやりと緑色になっているのがおわかりでしょうか?
茅として用いたススキのタネが一斉に芽吹いています。
葺いたばかりなのに、このまま雑草が茂るのではと心配される方もいますが、タネは暗く乾燥した屋根裏で何年も過してきて、突然日光と水を与えられたので条件反射的に芽を出しただけです。まだ茅が風化していない新しい屋根の上には土がありませんから、
芽を出して自分の栄養を使い切って枯れてしまうのってなんだか寂しいですね。
ceico さん、コメントありがとうございます。
タネが落ちる場所を選べないのは、植物の悲しさですが、それでも彼等は意外としたたかな戦略も持っていますよね。
地面の上も屋根の上も、ススキのように人海戦術をとる植物のタネで実は埋め尽くされていて、その中で条件に合ったものだけが育って行くわけですが、新しい屋根の上からはひとまずご退場ねがいます。
かわいそうな気もするけれど、それよりも、材料=モノと化して保存されていたススキの中から、待ってました!とばかりに芽を出す生命力をもった小さい小さい種たちに拍手、です。
mami さん、コメントありがとうございます。
保管してある茅を出し入れすると、翌春にはてきめんにススキが生えてきます。それは庭の手入れを考えると、頭の痛いことかもしれませんが・・・
一方で造成後の養生に高麗芝が貼付けられたものの、手入れされるあての無い法面を茅場に育てようと、ススキの種を大量に蒔いたこともありましたが、ほとんど芽を出しませんでした。芝が優先する現状ではススキは遠慮して棲み分けているのでしょうか。
このまま芝を刈り込んで根を張らせていれば、ススキの付け入る隙は無いのでしょうが、残念ながら放ったらかしにされているので、やがて芝が弱って剥げてきたら、あらためてススキを試してみようと思っています。
竣工したばかりの屋根も、1年たった屋根も本当に、きれいですね。タネって本当にすごいですね。文を読んでいると茅葺きって呼吸していて、命の一部なんだなぁって思います。まわりのものと、一緒に生きているかんじがいいですね。
涼しくなり、茅場にも愛しいメガヤたちです。
塩澤さんもお元気そうでなによりです。
ところで先日、富士市の登録文化財稲垣家の調査をされている方から、ここの屋根は縄やネソを使わず竹で巻いていると聞きました。
珍しいので安藤先生にも話しましたが、材種や技術も不明です。気になりましたので何かご存知でしたら。(さ)
こくぼ さん、awadano さん、コメントありがとうございます。
>こくぼ さん、
周りの大地と繋がっていることは、茅葺きの大きな魅力のひとつだと思います。
生存競争の厳しさも感じますが、それは多くの種類の生き物が共存する環境のために必要なことで、大切なのは、人の暮らしもまたその競争に関わることで、より多くの生き物が暮らす環境を産み出すことができることなのだと。
>awadana さん、
竹を使うというのは興味深いです。
下地を組んでいるという意味なら、潰した「ひしぎ竹」を巻いているのか、茅を止めているという意味なら、竹串を使っているのか・・・
いずれにしても補助的に使われている例なら存じていますが、縄やネソの代わりに竹を用いているというのはおもしろいですね。
詳しいことがわかりましたら、ぜひ続報をよろしくお願いします。