今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」での茅葺き民家保全のお手伝いにやって来ました。
昨年差し茅で補修した反対側の屋根を、今度はめくって葺き替えます。
山城萱葺き屋根工事のヤマダさんの指導で、学生達自身が足場に上って屋根を葺いて行きます。
適切な職人の助力が得られれば、素人でも建築工事に参加できるのも、茅葺きの大きな魅力のひとつです。
屋根裏では針受けも学生達がこなします。
屋根裏で地面の上で、テッタイ仕事を率いるのはヤマダさんの新しいお弟子さん、ナカヤマさん。
今回葺き替えに用いた茅は、トタンを被せて葺き替え用の茅がいらなくなった、ご近所の茅葺き民家からの頂き物だそうですが、男鬼楽座では自ら茅場の再生にも取り組んでいます。
こうして実際に自分で葺いてみると、「良い茅」とはどういうものか良くわかるようになります。茅を刈るモチベーションもきっと高まるとことでしょう。
里山での営みの再興を試みる、地に足の着いた取り組みに触れて楽しい一日だったのですが、帰り道で目にする雑木林は昨年以上にナラ枯れの被害が広がっていて、気持ちが暗くなってしまいました。
地球温暖化とか酸性雨とか様々な要因が重なっているのでしょうが、本来生態系の中で木を伐る役割を与えられているはずの人間が、化石燃料に過度に依存して薪や炭として木を伐らなくなってしまい、森が年老いた木ばかりになってしまったことも、大きな要因の一つに思えます。
屋根を葺くために身近な草を刈ると、豊かな草原が生まれる茅葺きという仕組みを通すと、人の営みと他の生き物たちとの関わりがとても良く見えて来ます。
男鬼に蒔かれた種が、自然と人の暮らしが織り成す里山全体の再生へと育って行ってくれることを願いながら、帰路につきました。
男鬼は一度だけ行ったことがあります。
もう30年以上前で、小学生の時。学校の夏休み林間学校のような一泊の合宿でした。
当時すでに廃村になっていて、跡地利用として彦根市が管理していたのだと思います。
河内から舗装されていない砂利道を延々と歩いていった記憶があります。
また一度いってみたいなと思いながらなかなか機会がありません。
河野啓介 さん、コメントありがとうございます。
男鬼楽座では、河野啓介 さんのように林間学校で男鬼に縁のある人たちに、再訪してもらえるような機会もつくれないか検討しているみたいです。
廃村になってそんなに経つのに、まだ人の営みの気配が濃厚なのに驚かされました。
彦根は湖岸に面した街の背後に山が迫り、複雑に入り組んだ谷の奥に集落が点在しているので、山中の集落と街とでは標高差があり積雪量等大きく差が出る割に、距離は近いため車があれば無雪期にはアクセスは容易で、離村した後も旧住人の方々が通っておられるそうです。