てっぺんまで苫を並べたら、棟の隙間を塞ぎます。
基本的には「稲架掛け(はさかけ)」するのと同じ収まり。茅葺き屋根の見せ場でもある棟仕舞いも、苫葺きではあっさり済ませます。
薄くて軽い苫葺きの屋根。屋根の外断熱としては屋上緑化が注目されていますが、遥かに重量の軽いキセカヤなら、建物にそのための補強を必要としません。つまり遥かに安価にできます。と、いうことは工事そのものが環境へ与える負荷も小さくてすみます。
こんなに薄いのなら「ヨシズ敷いとけば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、こんなに薄くても屋根として葺かれていますから、雨を漏らしません。
ヨシズだと雨を通して濡らしたあと、日陰にして乾き難くしてしまいます。瓦葺きでももちろん、RCの屋上に設置した場合など、既存の建物を傷めてしまうことになりかねません。苫葺きなら建物本来の屋根も守ります。
軒を刈り揃えて、瓦屋根との隙間にヨシズを編み込んで、完成。
苫は下地の竹に吊ってあるだけなので、強い風に葺かれても孕まずに、たなびいて力を逃がします。万一飛ばされても藁が散らかるだけ。
今回は切り妻の瓦屋根と周辺の環境に似合うように、落ち着いたデザインを心がけましたが、「着せる」建物に合わせて様々な姿に仕立てることも可能です。
ヨシズは屋根ではなく開口部に使わないと。ヤマダさんの伏見産ヨシの立て簾と、十三産ヨシの簾をしつらえて、縄文部屋モノノケ仕様が出来上がりました。
どのくらい快適になったのか?数値データは現在武庫川女子大学の学生さんが鋭意解析中ですが、この夏の猛暑をここで過ごしたサガラに、ぜひ直接に住み心地を尋ねてみて下さい。
12月5日に予定しておりました、カヤコヤ'10@淡河/神戸は、諸般の事情により中止せざるを得なくなりました。
皆様にご迷惑をおかけしてしまったことを深く反省し、教訓として、今後参加者の皆様により安心して楽しんで頂ける茅葺き体験会の開催を目指して行く所存です。
このたびは私共の準備不足からご迷惑をおかけしてしまい。本当に申し訳ありません。
重ねてお詫び申し上げます。
なるほど!いい。こうなったのですね。
実に良く考えて在ります。すばらしい。
ichide さん、コメントありがとうございます。
理屈の上では23条も都市計画地域も関係なく、街中でもキセカヤは使ってもらえるはずです。ただ、へ理屈はへ理屈として、実際使って本当に問題が無いかは、これから慎重に、たまに大胆に、検証して行かなければならないと思っています。
とにかく、まず議論の俎上に載せることが必要でしたから。
今年は猛暑で暑いですね。また原発事故のあおりを受けて節電でダブルパンチ。
で、この前ニュースを見てて思いついたんですが、この”キセカヤ”が企業や工場の節電対策にならないかなと。
だいたいが屋根に日射塗料を塗るか、スプリンクラーをつける程度。この”キセカヤ”の方がそれらに比べて節電効果大だと思うんですがいかがでしょうか?
これを何かのヒントにしていただければ幸いです。
ではまた。
ハルヤマ さん、コメントありがとうございます。
レスが遅くなり申し訳ありません。
ご指摘の通り、キセカヤは斜熱材として現代建築に茅葺きの知恵を導入することを目的にしています。「太陽電池でエアコンの電気代を賄うよりも、茅葺きにしてエアコン不要にした方が合理的だと思いませんか?」という訳で。
ただし、現代の日本社会において、茅葺きが既に滅びゆく郷愁の対象と見なされてしまっている現実があります。キセカヤは斜熱材として他に類の無い優れた性能を発揮し、安全性や法適合にも配慮した工法だと自負していますが、実例を重ねて行く事で茅葺きへの認識を少しずつ変えて行く必要があるのです。
昨年は「縄文部屋」と小学校での実験設置でしたが、今年は兵庫県庁そばに1ヶ月程の期間限定ですが設置する予定です。街中での設置に興味を持って下さる方がおられましたら、ぜひご紹介下さい。