1114 竣工

美山の山は紅葉の盛りを迎えつつあります。
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今年の紅葉は少し早いように思います。来月あたまのカヤカルまで保ってほしいのですが・・・

午後の日溜まりの中には、雪虫がふわふわと飛んでいました。
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今年は雪も早いのかなあ・・・茅刈り前のススキを押しつぶされないか心配です。

現場の周りの山も色づいています。
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でも、ナラ枯れで葉の無い木々が痛々しいです。
紅葉は来年の新緑が約束されているから、美しいのだと思います。来年の夏には枯れて赤くなるかも知れない木々の彩りは、眺めていて哀しくなります。

屋根の方は、軒を刈り落として揃えたら、足場を解体して掃除。
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そして、竣工しました。
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お知らせ 茅刈り体験会@美山

茅葺き現場体験会 カヤカル 参加者募集開始しました。

昨年、美山町「砂木の家」建設現場で行われたカヤマル'07@美山に続いて、地元砂木集落の主催で次回カヤマルの開催が決まりました。
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来年5月にこの村のお堂の屋根の一部を葺き替える際に、地下足袋持参での2泊3日の茅葺き体験会を行います。
それに先立ち12月6,7日に、葺き替えに使うための茅を村の人たち皆で刈り集めます。
そこで1泊2日の「茅刈り体験会 カヤカル'08@美山」を開催し参加者を募ります。

人と自然の共生する伝統的な暮らしの文化に触れ、山里での営みの喜びも苦労もリアルに体験できる機会です。

村のおっちゃんやおばちゃんたちと一緒に鎌を手に汗を流し、茅葺きが里山の大地としっかりと結ばれていることを実感してみてください。

期日:2008年12月6日(土)〜12月7日(日) 1泊2日

会場:京都府南丹市美山町高野地区 「砂木」集落内の茅場
(重要伝統的建造物群保存地区指定の茅葺き集落まで車で 30分)

詳細http://www.kayabuki-ya.net/plans.htm

問合せ:info@kayabuki-ya.net

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1111 刈込み

棟が収まったら仕上げのハサミをかけて刈込みます。
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ウマノリの上に乗っている丸太は「ユキワリ」と呼ぶ飾りですが、ウマノリの位置を保つ役目も果たします。
両端がピンと跳ね上がっているのは、根まで掘りおこして伐採した杉丸太を使っているからです。根ごと伐ろうとするときチェーンソーがとても傷むので我々ではここまでのものは出来ませんが、お施主さんがこだわりを持ってご用意されていたものを使わせて頂きました。
格好良いですね。

仕上げのハサミをかけることで屋根は平滑になり、見た目に美しいだけでなく水はけが良く丈夫になります。
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ただ、茅の材として一番丈夫な根本の部分を切ってしまう訳ですから、わずかに刈れば平らになるように、葺く段階できちんと屋根のかたちを出しておくことが肝要です。

現場の裏の畔で採った野イチゴ。名前は良くわかりませんが、程良い酸味が美味でした。
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秋は深まって山も里も実りの季節を迎えています。

心地よい季節の中、刈込み仕上げも軒を残すのみとなりました。
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1106 棟収め

棟を積みます。
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今まで葺いて来たのとは90度向きを変えて、棟に平行な方向に茅を積み上げて棟のかたちにして行きます。

水平を確認しながらかたち良く棟を積み上げたら、今度は再び棟に直角方向に稲ワラを葺き並べます。
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これによって棟を支える押さえ竹を充分に雨から養生し、仕上げの杉皮を水仕舞い良く置けるようにもなり、しっかりと固まった丈夫な棟になります。

棟を直接防水するために、二つ折りにした杉皮を敷き並べます。
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杉皮が風で飛ばされないように角材(カラミと呼びます)で押さえていますが、この段階では棟の裏表で吊り合っているだけで、固定はされていません。

栗材の棟飾り「ウマノリ」を載せます。ウマノリには杉皮を押さえる面にアゴが欠いてあって、カラミが引っかかるようになっています。
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つまり、棟を雨から守る杉皮に穴をあけたりせずに、ウマノリで棟全体を挟むようにして固めています。美山の茅葺き屋根のウマノリが、大きく重いのは伊達ではありません。

豊かな地域性は茅葺き屋根の魅力のひとつですが、棟の収め方には特に地域による創意工夫が見て取れて楽しいです。

1103 葺き上げ/屋根裏の木登り

職人の数が揃っている現場なので、屋根の表裏に分かれて同時に葺くことができています。
表裏ふたりずつの職人が、それぞれの両角に責任を持ちペアを組むので、表と裏で互いの早さと仕上がりの良さを横目に睨みつつ、何となく競争が始まります。
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葺き並べた茅の先が棟を越すようになると、表裏で押し合いになって仕事にならないところですが、そこは気心知れたもの同士、競争しつつも互いにタイミングを計って、現場を止めたりはしません。

棟近くまで葺き上がってくると、屋根裏で針受けをするのも、足場の確保に一苦労することになります。
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屋根裏で棟木を支える棟持柱によじ上っての作業。屋根屋には体重制限が避けられませんね。

無事に葺き上がり、棟を積む段取りにまでこぎつけました。
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小さな現場は茅葺屋で切り盛りすれば小回りが利きますが、棟を積み直すような大きな現場は、皆で集まって葺くと捗ります。互いに意識し合うから活気も出ますし。

とは言いながら、いつの間にやら色づきはじめた山に、季節が進んでいることを知らされます。
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雑木林の紅葉は、まず黄葉から始まるみたいです。

1030 屋根茸

そんな名前のキノコは多分ありませんが、砂木の家の屋根にキノコが生えて来てしまいました。
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屋根屋にとって茅の確保はもちろん、その保管も頭の痛い問題です。かさ張るうえに雨漏りや地面からの湿気、結露など、湿気によってだめになってしまうこともあるからです。
大切な茅を捨てるのも忍びなく、濡れた茅を往生際悪く干してみたりして、とはいえさすがにお施主さんのところには持って行けず・・・そんな茅がこの屋根にはたくさん集まってしまいました。

濡れて菌糸で真っ白になっていた茅。今更乾かしてみても、キノコをつくる準備はすっかり整っていたという訳です。
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キノコはハサミでチョン、と切り取って、土間での焚き火を再開して屋根も燻すことにします。
気休めですけれどね。
それにしても、苔も生えぬうちからキノコが生えるとは。

1029 葺き上げ/コマいヘビ

なかむらの現場は、職人の人数が揃っているので裏表同時に葺いています。
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天候の安定する季節にも助けられて、仕事は捗っています。

アリゴシまで葺き上がると、両角は狭い範囲で茅の向きを急激に変えなければならず、一層手間がかかるようになります。
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そこでケラバにあらかじめ短い茅をかきつけておくと、作業効率の向上と仕上がりの丈夫さの一石二鳥となります。

ところで、一服している足下でこんなヘビをひろいました。
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以前茅倉庫から小さなヘビが続々と出て来たことがありましたが、比べ物にならないほど小さいですね。
ヘビは茅葺き屋根の守り神ですから、大切にしなければ。

1024 壁塗り(屋根も) その3

仕事から帰ると、荒壁の裏塗りがされていました。
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左官屋さんが鏝で押さえた、塗り立ての壁はつやつやとしてきれいです。

裏側を塗ると、かちかちに乾いていた表側にも水分が滲みて来て、貫の影を浮かび上がらせました。
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裏を塗ると表も濡れるというのは、考えてみれば当たり前なのですが、少し意外に感じました。
現場で左官屋さんとご一緒することは少なく無いのですが、他の職工さんの仕事をまじまじと見る機会はあまり無いので、知らないことが多いです。

さて、砂木の家では壁だけではなく天井裏にも土を塗りました。
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換気塔である茅葺きの屋根裏への通気を妨げないように、ロフトの天井と茅葺き屋根の間には充分な空間を確保するようにしてあります。

そして、ロフトの天井板の上には、蔵を塗り込める要領で土を載せてもらいました。
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こうすることで天井裏は「半屋外」と割り切ってしまえば、外気を充分に取り込むことで、夏の涼しさと冬の暖房効率を両立出来るのではと考えています。
もうひとつ、万が一茅葺き屋根が火事になった時に、外に逃げ出す時間と空間を稼ぐこともできます。

ところが、ひとつ思いいたらないことがありました。
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天井裏に壁土を載せたら、天井板に水が滲みて来てしまったのです。
考えてみれば当たり前なのですが、全然予想していなかったので意外でした。

断熱と火災対策のために茅葺きの天井裏に土を載せるのは、大和天井として関西では広く行われているのですが、その場合は竹簀子の上にむしろを敷いて土を載せます。そうすれば少々水が滲みても問題なく、土も早く乾くでしょう。
砂木の家も天井板に少々シミができたくらいでたいしたことはなさそうですが、昔ながらのやり方は、やはり理に適っています。

1021 葺き上げ/スゴいヘビ

ナカノさんの美山茅葺き株式会社の現場へ応援に、伝統的建造物群保存地区の「北」集落のとなり、「中」にやって来ました。
ちなみに地元では、北はきたむら、中はなかむらと呼んでいます。
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大野の現場を片付けてからおっとり刀でやって来ましたが、既に軒付けは終わっているところからの合流となりました。

暖かな良いお天気が続いていますが、こちらの現場に来てから、冬鳥のジョウビタキが「ヒッ、ヒッ、」と短くホイッスルを鳴らす声を聞くようになりました。
少しずつですが、冬は確実に近づいて来ています。
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そんな小春日和に誘われたのか、こんなとんでもない体色のヘビが散歩していました。
ヤマカガシなのかなあ?体色変化の多いヘビだけれども、こんなカラフルなのは初めて見ました。

現場の方はヘビとは関わりなく順調に進んでいます。
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ナカノさんのところの若い衆は武相荘坂野家薬師門など、以前は泊まり込みで良く一緒に仕事をしていましたが、すっかり一人前の職人に育った最近では、各地の現場を任されて忙しいようで、会う機会も減っていましたから一緒に屋根を葺くのが懐かしいです。

1019 壁塗り その2

塗ってから3週間待って、壁はかちかちに乾きました。
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ちなみに裏側はこんな感じです。
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段々それらしくなっていく我家を、少し嬉しがって遠くから眺めてみました。
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この谷での長い長い人の暮らしの積み重ねが、砂木の集落の景観をつくっています。
新たに建てた拙宅がそこに馴染んでいるかどうかは、とても気になるところです。自分のつくった物が風景の中で浮いてしまうようでは、自分の人生に先人への敬意と環境への意識が欠けていることになってしまいますが、さて、砂木の家はどうでしょうか?